太陽光投資は、設備の初期費用だけで1,000〜2,000万円必要となり、消費税として10%の100万〜200万円ほど支払うことになります。
本記事では、消費税の一部が還付される、「消費税還付」という制度について詳しく解説していきます。
初期費用が高い、太陽光投資では特に効果をもたらす制度です。ぜひご参考ください。
目次
消費税還付とは?
消費税還付とは、受け取った消費税額よりも支払った消費税額が大きい場合、その差額を税務署から還付してもらえる制度です。
例えば、課税期間(通常、事業年度と同じ期間)の売上高が1,100万円(内消費税額100万円)、事業のために支払った金額が440万円(内消費税額40万円)の場合、100万円-40万円=60万円を税務署に納税することになります。
しかし、設備投資など多額の支払いが短期間で行われた場合、支払った消費税額が、納税額を上回ることがあります。
例えば、売上高が1,100万円(内消費税額100万円)、設備投資などの金額が3,300万円(内消費税額300万円)だった場合、100万円-300万円で、マイナス200万円です。
この200万円を税務署に申告すると、200万円の還付を受けることができます。
太陽光投資は特に消費税還付を受けやすい
初期投資が大きい太陽光投資は、消費税還付の恩恵を享受できます。
消費税還付の大まかなイメージは以下になります。
【例】サラリーマンAさんが令和4年の課税期間中(令和4年1月1日~12月31日)の取引
・売電収入:110万円(内消費税額10万円)
・設備への投資:1,100万円(内消費税額100万円)
→90万円の消費税還付(10万円-100万円=▲90万円)
※詳細な経費項目及びケーススタディは後ほど説明します。
太陽光投資の消費税還付で対象になる経費
消費税還付の対象になる支払いは、課税取引にあたる支払いに限ります。
課税取引は事業者視点で「課税売上高」「課税仕入れ」の2種類があり、太陽光投資の場合は「課税売上高=売電収入」「課税仕入れ=設備への投資」となります。
対象になる経費
金額の大きい課税仕入れは主に以下になります。
✓設備の購入費
✓設備の設置工事費
✓メンテナンス費用
✓専門家報酬
細かい経費として、交通費、銀行の振込手数料、事務用品の購入費、書籍代等も課税仕入れになります。
対象にならない経費(非課税取引)
課税取引にあたらない支払い(非課税仕入れ・不課税仕入れ)は、そもそも代金に消費税を含まないため控除できる税額がありません。
従い、下記の経費は消費税還付の対象外です。
✓土地の購入費
✓土地の賃借料
✓損害保険料
✓融資の支払利息
✓郵便切手
✓給与
✓税金、社会保険料
✓減価償却費
参照:再生可能エネルギー普及促進協会『課税仕入れと仕入税額控除(本則)』
太陽光投資では経費計上することで、節税対策を行えます。詳細は以下の記事をご参考ください。
消費税還付を受けた際のケーススタディ
【例】
設備の額:1,650万円(内消費税150万円)
諸経費(メンテナンス・専門家報酬等):33万円(内消費税3万円)
売電収入:165万円(内消費税15万円)
消費税還付:138万円((150万円+3万円)ー15万円)
※計算上、売電収入は一律で想定
※3年間「課税事業者」とした場合の還付額-納税額の収支表
※「課税事業者」に関する詳細は後程詳細を説明します。
2年目、3年目の取り扱い課税事業者になることを選択した場合、3年間は免税事業者に戻れない為、2年目・3年目は基本的には納税申告が必要になります。(貰った消費税の方が、支払う消費税よりも大きくなる為)
サラリーマン・個人が消費税還付を受ける方法
「消費税の課税事業者」になる(その上で一般課税制度を選択する)必要があります。
サラリーマンや個人の方は、太陽光投資等の個人事業を営んでいなければ、通常、免税事業者(消費税の納税義務がない方)です。
免税事業者から課税事業者になる方法は2つあります。
方法1:消費税課税事業者選択届出書を提出する
方法2:課税売上高が1,000万円を超える事業者になる
方法1:消費税課税事業者選択届出書を提出する
課税売上高が1,000万円以下の方が対象で、「消費税課税事業者選択届出書」 を税務署に提出すると、消費税の課税事業者になることができます。
この書類を提出すると、自ら課税事業者を辞める届出(消費税課税事業者選択不適用届出書 )を提出しない限りは課税事業者のままです。
尚、課税事業者を選択すると3年間は免税事業者に戻れません。
<消費税課税事業者選択届出書の提出期限に注意>
提出期限は、該当する課税期間初日の前日までです。例えば、2022年4月1日から課税期間とする場合、2022年3月31日までに税務署へ届出書を提出する必要があります。
但し、新規事業を開始した1年目については、その課税期間の末日までに届出書を提出することで、課税事業者になることが可能です。つまり、2022年4月1日に開業する場合、2023年3月31日までが提出期限になります。
ここで、注意すべきは事業開始日の定義です。
「消費税における新規事業を開始する日は、実際に資産を取得した日ではなく、新たに事業を行うに当たって必要な契約の締結等の準備行為を開始した日となります。」
参照:税理士法人ディレクション『【落とし穴】事業開始日の誤りで消費税還付が受けられなかった事例』
と定められているため、例えば以下のケースでは、2021年12月31日までに、届出書を提出する必要があります。
2021年11月:太陽光発電所の購入、契約完了
2022年1月:開業&太陽光発電所の稼働開始
2022年中に提出した場合は、翌年2023年1月〜12月が課税期間として定められます。太陽光投資では初年度に多額のコストがかかるため、課税期間が1年遅れると、消費税還付の恩恵を受けることができません。
太陽光発電所を購入する際は、必ず課税期間を確認し、不安があれば税理士等に相談することをお勧めします。
<帳簿書類の保存も忘れずに!>
課税事業者(簡易課税を選択した事業者を除きます。)が仕入税額控除および売上対価の返還等の適用を受けようとする場合には、一定の帳簿(仕入税額控除の場合は帳簿および請求書等)の保存が要件とされています。
参照:国税庁『帳簿の記載事項と保存』
つまり、太陽光発電の設備費用等にかかる消費税分は、帳簿および請求書によって適用が認められるため、上記書類は一定期間保存する必要があります。
方法2:課税売上高が1,000万円を超えた事業者
基準期間における課税売上高が1,000万円(税抜き)を超えると、強制的に課税事業者になります。基準期間とは、2期前の課税期間のことです。
個人の課税期間は1月1日〜12月31日ですから、例えば令和5年の基準期間は令和3年になります。令和3年中の課税売上高が1,000万円を超えていれば、令和5年は課税事業者になります。
<課税売上高が1,000万円の判定と超えたときの手続き>
課税売上高とは、消費税の課税対象となる取引の売上高です。
課税売上高が1,000万円を超えた場合、消費税課税事業者届出書(基準期間用)を提出する必要があり、提出しない場合、2年後には消費税の納付義務が発生します。
<特定期間の課税売上高でも課税事業者になる>
「特定期間」(前期開始から6か月間)の課税売上高または給与等の支払額が1,000万円を超える場合も強制的に課税事業者になります。
但し、サラリーマンや個人の場合、方法1によって課税事業者になるケースが大半と考えられます。
消費税還付を受けるメリット・デメリット
消費税還付を受けるメリット
・利回りがアップする
消費税還付によって資金が戻った場合、投資の利回りが実質上がる。
・資金繰りに余裕ができる
消費税還付によって手元に現金が残るため、キャッシュフローの改善が見込める。
消費税還付を受けるデメリット
・手間が増える
「消費税及び地方消費税の申告書」の税務署への提出、消費税の申告手続きを行う必要がある。
・3年間トータルでの収支を考える必要がある
2年目・3年目は申告が必要になることを念頭において、消費税還付を受けるか否か、判断をする必要がある。
消費税還付の手続きについて
手続きをする期限
いわゆる還付申告は、消費税還付の対象となる課税期間の翌年1月1日から5年間です。この期間を過ぎると、還付金の請求権が時効消滅します。
自分で手続きをする方法
消費税還付の手続きを自分で行う場合の大まかな手順は下記となります。
<関係書類の整理>
消費税の課税取引に関する書類を整理します。
特に課税仕入れに関するものは仕入税額控除の要件に漏れがないかをチェックした上で、確実に保存します。
<消費税申告書の作成>
- 消費税及び地方消費税の申告書
- 消費税の還付申告に関する明細書
上記を作成します。消費税還付金額の算出には、確定申告書等作成コーナーなど計算機能のある申告書作成ツールの活用を推奨します。
<消費税申告書の提出>
作成した申告書を、住所地を管轄する税務署に提出します。書面で提出(郵送可)する方法と、e-Taxによる電子申告をする方法があります。
e-Taxによる電子申告は、初めての利用時のみ利用開始のための諸手続きがあります。
税務関係が面倒!という方はSOLACLEへ
消費税還付の書類作成や申告は想像以上に煩雑な作業です。また、消費税還付という性質上、税務署の目も決して甘くありません。
保存義務のある帳簿書類を保存し、金額に誤りのないよう申告書を作成する必要があります。消費税還付など税務申告書の作成や代理申告を依頼できる専門家は、法律上、税理士のみです。
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