固定資産である太陽光発電設備は、減価償却の対象として節税効果が期待できます。しかし、処理方法や計算方法を間違うと、節税効果の恩恵を十分に享受できなくなります。
本記事では、減価償却に関する基礎的な内容から計算方法、中古物件に関する減価償却の取り扱い例について解説します。
- 耐用年数がわからない
- 計算・計上方法がわからない
上記の課題を抱えている方は、ぜひご参考ください。
目次
国税庁が定める法定耐用年数とは
固定資産が税務上価値を持つとされる年数で、減価償却年数とも呼ばれます。土地は例外として、固定資産は時間の経過とともに物理的に損耗し、いつかはその資産が持つ価値が喪失します。
従い、国税庁は資産ごとに耐用年数を設けることで、減価償却における計算を簡略化し、納税者の公正を期しています。
法定耐用年数は国税庁が、一覧表で公開しております。但し、耐用年数はあくまでも国税庁が定める税務上価値を保有する期間につき、必ずしもその固定資産が使える期間(寿命)とは限りません。
太陽光発電の寿命に関する内容は、こちらの記事をご参照ください。
太陽光発電の耐用年数は何年か
太陽光発電設備は「機械・装置以外のその他の設備の主として金属製のもの」に分類されるため「17年」の値が適用されます。
参照:国税庁『主な減価償却資産の耐用年数表』
但し、これは新築物件を購入した際に限るため、中古物件を購入した際は取り扱いが異なります。
中古物件の耐用年数は、基本的には以下の計算式より導かれます。
中古物件の耐用年数=17年-稼働年数+稼働年数×20%
例えば、5年経過している場合は、以下の計算で求められます。
耐用年数=17-5+5×20%=13年
中古物件を購入するメリット・デメリットについては以下をご参照ください。
太陽光発電における減価償却メリット
減価償却とは
資産の価値は時間経過とともに失われるという前提の元、定められた耐用年数で分割して経費計上するルールのことを指します。
例えば、100万円の機械を購入した際、購入した年に100万円を一度に経費計上するのではなく、「1年目は20万円、2年目に20万円、3年目に20万円・・」と何年かにわたって分割して計上します。
※減価償却が適用されるのは10万円を超える資産に限ります。
以下で、太陽光発電における減価償却メリットについて解説します。
メリット1:長期にわたっての節税効果
先述のとおり、太陽光発電設備の耐用年数は17年間と、長きにわたり減価償却による節税対策が可能です。
節税対策や税金対策に関しては、こちらの記事で詳細を解説しております。ぜひ、ご参照ください。
メリット2:適正な損益が把握可能
法定耐用年数の期間中、各年度の計上額は購入時点で確定させることも可能です。
事前にコストを把握することができるため、長期的な事業計画が立てやすいこともメリットの一つです。
メリット3:周辺機器・設備も減価償却できる
太陽光発電の設備だけでなく、周辺の機器や設備も10万円を超える場合は、減価償却できます。
例えば、以下のような資産が対象です。
フェンス(耐用年数10年)
フェンスは、外部から人間や野生動物の侵入を防ぎ、設備と周辺環境の安全双方を守るための設備です。「太陽光発電事業計画策定ガイドライン」に基づき、一部の例外を除いて設置が義務付けられています。
除草シート(耐用年数2年)
除草シートは、雑草の発生・成長を防ぐために、発電設備の周辺に敷設するシートです。雑草対策としては安価ですが、広大な面積に敷設する場合、10万円を超えるケースもあります。
他の雑草対策としては以下のようなものが挙げられます。
- アスファルト舗装(耐用年数10年)
- 砕石(耐用年数15年)
- カバープランツ(耐用年数15年)
遠隔監視システム(耐用年数5年)
遠隔監視システムは、日々の発電量を観測し、データを送信するシステムです。
データから異常を検知することで、設備に生じている異常や不具合を早期に検知可能です。適切なメンテナンスのためのアラートの役割も期待できます。
その他メンテナンスに関する事項は、こちらの記事をご参照ください。
減価償却の計算方法は2つ
以下の2種類があります。
- 定額法
- 定率法
定額法
購入時点の資産額を法定耐用年数で割り、毎年同額で減価償却する方法です。
資産価値が毎年一定額減少していく考えに基づきます。
例えば、3,400万円の設備の場合
償却額/年=3,400万円÷17年=200万円
が毎年減少する資産価値として計上できます。
計算が容易な点がメリットとして挙げられます。
また、長年にわたり一定の節税効果を得られるため長期保有に向いています。
定率法
耐用年数を迎えた時点で0(正確には1円)になるよう一定の比率で減価償却する計算方法です。資産価値の減少幅は、価値が高い購入時点が最も大きく、徐々に減少していく考えに基づいています。
太陽光発電設備の場合、減少率は11.8%です。償却額が保証額(取得時の資産価値×4.038%)を下回った時点で12.5%という改定償却率が用いられます。
以下が3,400万円の物件でのシミュレーションです。
※1,000の位を四捨五入した概算です。
※正確な値で計算すると18年目の資産額は1円になります。
資産価値が高い購入初年度から数年間の間の減少幅が大きく、より大きな節税効果をもたらすことが特徴で、事業開始当初の収益を抑えたい場合は特に有効です。
ただし、途中から改定償却率を用いるなど、計算が煩雑になる点がデメリットとして挙げられます。
償却方法は選択可能
減価償却を行う上で定額法・定率法いずれを用いるかは任意です。
初年度に大きく売上が伸び、節税対策を行いたい場合は定率法、毎年一定の額を計上したい場合は定額法など、事業計画に沿った判断が必要です。
但し、一度選択した計算方法は3年間変更できないため、慎重な選択が求められます。
中古物件の事例紹介
以下の3つの中古物件で、減価償却のシミュレーションを行います。
※周辺機器は除いて計算
ケース1
経過年数5年、資産価値2,000万円、償却方法が定額法の場合。
計算は以下になります。
①耐用年数を算出。
耐用年数=17年-5年+5年×20%=13年
②定額法による償却を行う。
償却額/年=2,000万円÷13年=1,538,462円
ケース2
経過年数10年、資産価値1,500万円、償却方法が定額法の場合。
計算は以下になります。
①耐用年数を算出。
耐用年数=17年-10年+10年×20%=9年
②定額法による償却を行う。
償却額/年=1,500万円÷9年=166,667円
ケース3
経過年数15年、資産価値1,200万円、償却方法が定率法の場合。
計算は以下になります。
①耐用年数を算出。
耐用年数=17年-15年+15年×20%=5年
②定率法による償却を行う。
耐用年数が5年の場合の償却率は40%、償却額が保証額(取得時の資産価値×10.8%)=を下回った時点で50%という改定償却率が用いられます。
※保証額を計算する
>保証額=1,200万円×10.8%=129万6000円
今回のケースでは、償却額が保証額を下回る4年目から改定償却率が使用されています。その後は償却額が以下の計算式で算出され、毎年一定となります。
>償却額=償却額が保証額を下回る年度(4年目)の期首簿価×改定償却率
※1,000の位を四捨五入した概算です。
※正確な値で計算すると6年目の資産額は1円になります。
太陽光投資なら『SOLACLE』へ
太陽光投資の収支シミュレーションや節税効果を把握する上で、耐用年数および減価償却についての知識、理解は必要不可欠です。
但し、中古物件の耐用年数のように、ケースバイケースでの判断が求められることもあるため、詳細は税理士やプロによるサポートを受けることをお勧めします。
SOLACLEでは、丸紅が保有する優良な中古物件を取り扱うだけでなく、税務や融資、保険、メンテナンスなど、太陽光投資に必要な要素をワンストップでサポートしております。
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